2019.10.15 Tuesday

海辺のパピリオ

         

時間は少し遡って、先月の半ば。緑二重線の国民食器湯呑みを拾ったのと同じ日のこと。なんと、パピリオクリームの陶製瓶まで出てしまった! 実は以前にパピリオの完品を拾ったのも同じ場所。再び出会えないものかと、密かに願い続けていたのが実現したのだ。遠目に四角いものが落ちているのを見つけた時、心が踊ってしまった。さすがに上面や口部分に欠けがあるけれど、海上がりでこの状態なら十分すぎるレベルだ。拾った時点では、写真のように全体に青い染みが広がっていたが、乾燥したらほぼクリーム色になった。


 

パピリオクリームは、昭和初期に伊東胡蝶園から発売されていた化粧品だ。画家・装丁家の佐野繁次郎が意匠のプロデュースをしていることでも知られている。この四角い陶器瓶は第二次大戦後の昭和30年代につくられたと言われていたが、戦前から使われていたという説もあるようだ。また、戦中には統制番号付きの円筒形タイプも存在している。自分は戦前の広告で円筒形タイプらしいのが写っているものは見ているが、四角いタイプのものは見ていない。また、自分が知る限り、四角いタイプで統制番号が付いたものはないはずだ。戦前から存在したのなら、なぜ統制番号付きが存在しないのだろうか。円筒形タイプの方が熟練工でなくても製造しやすいため、戦中は円筒形タイプのみつくられたのだろうか。まだまだ、パピリオには謎が多いようだ。


 
 

今回のものは、以前に拾ったものに比べて、ほとんど違いはない。若干、地の色が濃いめなのと、「P.」の文字がくっきりしている程度の差だ。ひとつ大きな違いは、今回のものの底には、「Z」または「N」と読める線刻があること。製造工場などを表している印なのか、これもまたパピリオの謎のひとつだ。



2019.09.26 Thursday

Green & Double line

 

千葉県をはじめとした関東南部に大きな被害を出した台風15号。通過した直後の9日に海岸をチェック(その時の様子はこちらへ)、そして約1週間が経過した17日に、再び海岸を訪れてみた。海岸はある程度は清掃が進んでいて、当日は天気も良かったので、気持ちの良い浜歩きとなった。潮の引いた砂地を歩いていくと、埋まった陶器の高台を発見。蹴飛ばしてみたけど、少し動いただけで砂から出てこない。あれ、本体がある? そこで掘り出してみると、なんと緑二重線の国民食器湯呑み。しかも完品だ。


 

このタイプの湯呑みは3つめ。今回のものは高さ65ミリ、口径68ミリ。過去の2つのうち、旧海軍造船所近くで見つけたもの(写真左奥)は、高さ70ミリ、口径72ミリ、旧海軍航空技術廠近くで見つけたもの(写真右奥)は、高さ67ミリ、形が少し歪んでいるため、口径は長径70ミリ、短径68ミリだ。3つともほとんど同形なのだが、少しずつ差ができている。今回のものの特徴は、一番肉厚ということだ。縁の部分で測ると約5ミリもある。内側の底を見た感じからすると、それでも下部よりは薄く仕上げられてはいるようだ。側面の仕上げはやや荒く、ボツボツと釉薬の下に異物が入り込んで凸凹している。


 

高台の仕上がりも甘く、部分的にズレができている。その内側には統制番号などは刻まれていない。国民食器は、主に工場などの食堂で使われる量産食器で、昭和初期から作られ始め、戦後もしばらくは作られていたらしい。統制番号は経済統制がおこなわれた、昭和16年3月から終戦までの約4年間につけられていたので、今回のものはその前後のものと考えられる。作りに甘さが見られるのは、戦争によって熟練工がいなくなった戦後に作られたためとも考えられるが、昭和16年以前でも日中戦争の最中であり、材質・品質等の維持が難しかったとも考えられる。なんとも判断のしようがないけれど、この緑色の二重線が描かれた食器は、日本の歴史の証人であることに変わりはない。



2018.12.09 Sunday

かわらけ

        

千葉遠征の続きがあるのだけど、現場写真がない上に、物撮りをしていないので後回し。ひと頃の忙しさを脱したものの、相変わらず地元の海岸はご無沙汰状態だったので、今週、久しぶりに鎌倉を歩いてみた。いつもは材木座海岸だけなのだけど、今回は由比ヶ浜も含めて往復。とは言え、この時期はそれほど何か出る時期でもなし。前の日に少し風が強かった…というのに、わずかな期待を込めてというところだ。しかし、由比ヶ浜の方でほんのわずか微小貝があったくらいで特に拾うものもなく、材木座に戻ってきて青磁片1個。何にもないけど、天気が良くて気持ちいいからいいか〜とくらいのもの。と、思ったらこんなものが落ちていた。




これは、かわらけだ。かわらけとは「土器」と書き、中世の頃によく使われた、使い捨ての素焼きの器のことだ。鎌倉の海岸では、欠片は無数に落ちている。かわらけの欠片の特徴は、レンガや植木鉢のような赤茶色をしていて、ザラザラとした質感。あまり高温で焼かれていないので、断面を見ると赤茶色なのは表面だけで中が黒くなっている。欠片は無数に落ちているとは言え、土に埋もれた遺跡でもなく元が使い捨てだけに、このように全体の形が残っているのは極稀なこと。いつかは拾いたいと思っていたけれど、10年以上鎌倉の海岸を歩いて初めてだ。そういう意味では、中国青磁片よりも貴重かも。口径は6センチ。大きさからすると酒器、盃のようなものだろう。これを使って鎌倉武士が一杯やっていたかもと思うと、なかなか感慨深いね!
2018.04.27 Friday

久しぶりに…

       

ひょうちゃん(初期型)を拾った。実は今まで拾ったひょうちゃんはほとんどお友達にあげてしまって、手元には残っていない。まあ、これからも集めるつもりはないのだけど、なんとなく…ね。そう言えば、今日の横須賀線内で、崎陽軒のビニール袋を下げた人が乗っていた。あれは多分、特製シウマイとシウマイ弁当だった。久しぶりに食べたくなった〜(笑)


2016.12.28 Wednesday

日の丸印判

         
          

もういくつ寝ると、お正月?♪ 最近はお正月も様変わり。門松を見るのも珍しくなっているし、昔のような大きなお飾りを買う人も減っているらしい。あまり見なくなったと言えば、玄関先に国旗を掲揚する家もほとんど見なくなった。まあ、自分はかなり面倒臭がりの方なので、積極的にやることはないだろうとは思うものの、子供のころによく見ていた風景が消えていくのは、ちょっと寂しい感じがする。こんなことを思うのは歳を取った証拠なのかもしれないけれどね(笑) さて今回は前振りに出てきた国旗、つまり日の丸柄の印判皿。


           
           

拾ったのは3年前で、台風後の千葉。実はこの手の印判皿は2枚目で、今度も完品か!と思ったら、座念ながら小さな削げ欠けが1カ所あった(泣) それにしても、1枚目(これは地元で拾ったもの)と比べると、この2枚目はとっても出来が悪い。1枚目も印判のズレがあったりして、けっしてよい出来ではなかったけれど、今回のものはそれに輪をかけて悪い(笑) 見込み部分など、染料が滲んでほとんど絵が潰れてしまっている。おそらく、相当に使い回した印判を用いたか、雑な大量生産を繰り返した結果だと思う。けれど、この時代のものはこの“甘さ”がひとつの味わいでもある。それに、絵柄が変だって使えれば問題ない…という強かさも、見習う部分が多い気がするね(笑)


さて、今回が2016年の最後の更新になります。今年はこの「hiroimono」あまり更新できずにスミマセンでした。来年はビーチコーミングに精進して、おもしろい記事を更新できればと思います。また例によって年末年始はネット断ちしておりますので、コメントへのレスが滞りますこと、ご了承ください。それでは、よいお年をお迎えください。
2015.10.25 Sunday

気になる陶片…近代編

         

今年の早春、中国青磁を狙って鎌倉の海岸を歩いたときの副産物たち。最初のものは、見つけた瞬間「あっ、これはどこかで見たことが…」と思った。おそらく戦前もの。なので右書きで「シントーレ」だ。ところが検索しても何もヒットしない。そこで、この手のものを見た記憶があるなら、それはきっとりちょうけんさんのところか陶片狂さんのところだと当たりをつけて探してみる。するとありました! 見つからないはずだよね。名前は「シントール」だもの(笑) この正体は巴布薬…湿布をする時に塗る薬剤らしい。蓋の絵は戦前の日本の領土や勢力範囲を描いていているというものだ。これは蓋だけでもぜひ完品を拾いたいものだね。


         

次は、写真を見ただけで製造元というか何の関連か、わかった人もいると思う。これはキリンレモンのノベルティ灰皿の欠片だ。本来なら権利関係などもあるのでこういうことはしないのだけど、もうネット検索しても画像が出てこないので、かつてオークションに出品されたらしいものの写真を載せておこう。今年の春時点でも、写真はこの1点しか見つからなかった。キリンレモンの発売開始は1928(昭和3)年。この灰皿が作られたのも、側面にある「清涼飲料」の文字が右書きだし、資料の乏しさから考えても、戦前のもので間違いないだろう。


                

最後に紹介するのは、陶製容器の蓋。


          

          

中央のエンボスを見てみると、花椿のマーク。つまりこれは資生堂の商品だったことがわかる。しかし、資生堂の容器は大手企業の割には資料が少ない。陶製なのだから戦時代用品というのがまず頭に浮かぶが、それに該当するような商品容器は見つかっていない。資生堂と言えば昔、糊瓶みたいなグリーン硝子の広口瓶で花椿マーク入りのを見つけたこともあるが、それも正体不明だった(肝心の瓶は、中にピッタリはまった石を取り除こうとしたら、パックリ割れちゃったけどね 泣)。



秋も花尽くし。センブリ咲いてます……海山日和
2015.08.13 Thursday

満州独立守備隊の杯

       

もうすぐ終戦記念日。さらに今年は終戦後70周年ということもあり、また安保法制の喧喧諤々などもあって、いろいろと話題にもなっている。まあそのあたりの話を当ブログでするつもりはないのだけれど、せっかくなので今回はあの時代に直接関連するものをアップしようと思う。ものは4〜5年前に拾ったもので、海岸ではなく里山の人家周辺に落ちていたもの。兵役を満期除隊した際に記念品として知人に配るための品、いわゆる兵隊杯(兵隊盃)と言われるものだ。


         

兵隊杯については、このブログでも過去にいくつか陶片などを紹介している(これとかこれ)。今回の絵柄は日章旗と見慣れない国旗が描かれたものだが、その下に書かれた部隊名で正体がなにかすぐにわかる。左側に描かれた少し派手目な国旗は満州国旗だ。ちょうど、richoukenさんが同じ満州国関連の兵隊杯をアップされていたのでコラボしてみた。盃には2か国の国旗の上に、小銃を2丁重ねたマーク、おそらく部隊章と思われるものが描かれ、上に「記念」、下に「満州独立守備隊」の文字、そして左右に和歌のようなものが上の句と下の句に分けて書かれている。


          
          
          

さて、その左右に書かれた歌だが、変体仮名も使われていて今ひとつ自信を持って判読できないのだけど、およそ次のような感じだと思う。「満蒙の我権益を守備終わり 今日ぞ故郷の春に逢●●」。言ってみれば「お勤めを終えて、やっと故郷に帰れるぞ!」って内容だ。問題は最後の2文字。変体仮名に照らし合わすと上の字は「か」(可の変形)に見え、下の字は「こ」(古の変形)に読めるのだが、「逢」の送りとしてはピッタリこない。どなたかご教授いただければと思う。



暑くったって花は咲く!……海山日和
2015.05.12 Tuesday

久々くらわんか

            

先月の初めごろ、春から少し季節が巻き戻ったかのように北寄りの風が吹き、一時的に材木座海岸の砂が流出した。その雰囲気はいいものが出た10年近く前とどこか似た状況。この春は青磁片狙いで歩いていたのだけど、もしかして…の期待感があった。そんな時に出会ったのが、鎌倉では相当久しぶりのくらわんか碗。これだけの大きさの陶片が出るのは、ここ最近では奇跡的だ。と言っても残っているのは高台を中心とした部分だけだけどね。せめて一部でも縁まで残っていたらすごかったけど。文様は一番ありふれた草木文(だが、それがいい!)。高台にはよくわらかない文様が入っているが、見込みには文様がない。下の写真はその後日に出た江戸ものの陶片。かなり深めの皿だが、膾皿の範疇に入るものか。2分の1弱の大きさはやはり奇跡的。外側はシンプルな草木文。内側は縁と見込みの周りに二重線。見込みには重ね焼きの跡が残っていた。残念ながら砂の流出はほんのわずかな期間だけで、再び南風が吹き出したらあっと言う間に元に戻ってしまった。手にしたのは今回の江戸陶片2つと、少し前に紹介した染色体文様の湯飲み片、そしてもう1つ…それは次のネタで(笑)


          


ウミウシたくさん!……海山日和
2015.04.24 Friday

染色体文様

        

最近お知り合いになった「大昭和時代趣味」さんのところで、染色体文様の湯飲みが紹介されていた。実は今月初めにこちらでも拾っていたのでコラボしてみよう。主に幕末から明治頃に流行ったらしいのだが、何をモチーフにしたのかはっきりしないこの文様、その形からビーチコーマー仲間の間では「染色体」と呼ばれている。僕ももう何年も昔に鎌倉で完品を1つ拾っているのだけど、未だにちらほら出ているようだ。前の1個を拾った時はまだ陶磁器の知識に乏しく、完品で上がるくらいだからどうせ新しいものだろう…などと思い、2回くらい見かけてもスルーしていた。それが今となっては大きな後悔で(笑)、欠片ではなく完品にまた出会わないかな〜と思っていたのだ。


          

やっとであった2個目の染色体文様の湯飲み。砂の中に埋もれて高台だけ見えていたのを、ほじくり返した。まあ結果から言えば、最後の写真の通り割れていて、完品ではなかったのだけどね(泣) 今回のものは前回のものとほぼ同じで、口の径は83ミリ。染色体文様のパターンや見込みの文様、口縁が臙脂色で縁取られることも同じだ。違うのは、今回のものは全体に細かい貫入が目立つということくらい。う〜ん…それにしても惜しかった。キターッ!と思ったんだけどね(笑)それにしても、この文様は各地で見つかっているようだし、相当に幅広く普及、使用されたものなんだね。


          


えっ、神奈川で?……海山日和
2015.04.03 Friday

銅版転写の湯飲み

       

今回は湯飲み茶碗2つ。どちらも大正〜昭和初期に多く作られた銅版転写の絵付けタイプだ。まず最初のは墨絵を思わせるようなやや青みがかった墨色で、木々を背景にした鹿の姿が描かれている。木は広葉樹なのか針葉樹なのかよくわからない感じだけど、深山に鳴く鹿の雰囲気がよく表現されている。ちょっと花札風でもある。縁が何カ所か欠けてはいるものの状態もまあまあ。仕舞い込んでしまったのでサイズは測っていないけど、通常の湯飲み茶碗よりも少し小振りだ。


         

2つめも上と同様で少し小振りの湯飲み茶碗。特徴なのは多色刷りをしているところだ。ただ多色刷りしていると言えば手が込んでいると思われがちだが、これはもう焼き上がりがとても悪い。釉薬が均等に付いていないようだし、他のものとくっつきそうになっていたのかもしれない。とにかく売り物にするには出来が悪すぎる代物だ。でも昔はそんなものでも流通したんだよね。まあ通常より安価で出ていれば買う人はいるだろうけど…。絵柄は、菊の花に竹、松、四阿のようなものも見える。状態も良好。それにしても、これら2つを拾ったのはもう10年近く前で場所は鎌倉だったと思うけど、その頃はこういうのがよく出たんだよね〜。最近はサッパリ。大きめの陶片すら見ることが少ない感じだ。ただ、たまに染色体文様の湯飲みとか拾われている人がいるので、単に自分に運がないだけかもしれないけどね(笑)



春だから…更新しますよ……海山日和
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